2022/12/24

映画生きる(23)

        イリッチの死(6)。。。。。。。45年の生涯をとらえるこの小説の主眼は、自覚症状が出現し病気を疑うか否かを迷った時期から、医師の診察を受け治療を開始しそして亡くなるまでの3か月間に置かれています。発症から1~2ヶ月で本人だけでなく周りの人も死を意識し、本人は悟ります。1969年「死ぬ瞬間」で明らかにされたキュープラー・ロスの否認、怒り、取引、抑うつ、受容の5段階を念頭に読み進みました。1882年当時とは80年以上の開きがありますが、主人公が45歳と若い事もあり人生もやっと上り始めた時期と重なって言外に無念さが伝わって来ます。「死ぬ瞬間」での受け入れとイリッチの受け入れは少し違っているように思います。一つは今は最後を自宅ではなく病院や施設で迎える人が殆どだと言う事。二つは家に使用人を抱えている所は現在は少ない事です。ある程度の我儘が許されていた時代だったのかも知れません。何より死を受け入れる立場と死ぬ前に自分を変える立場の差があり、その余力を有していた点に注目したいと思います。